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大阪市コミュニティビジネス中間支援事業について

はじめに

大阪市より平成17年度コミュニティービジネス(CB)の中間支援団体としての助成金事業を行いました(平成18年2月末終了)。エイジコンサーン・ジャパンでは、英国における地域社会福祉に活躍・貢献している人材・組織との幅広い交流によるネットワークを有効に活用し、特に高齢者へのサービスに重点を置き、日本の社会起業家が必要とする英国の現地情報や英国の社会的企業、NPO/NGO、社会起業家とのネットワークを構築するための支援と新しいボランティア形態の普及を行っております。

当該ページでは、以下のことについて取り上げています。

レポートについて

このレポートは英国在住の社会起業家にして、ソーシャル・インクルージョン・コーディネイターのスコット・バロン氏を筆者に、数多くの英国人にご協力いただき編集をいたしました。英国人の視線で書かれている文章のニュアンスを、できるだけそのまま伝えれるように書いております。英国発祥の“Volunteer” や“Community Business”という単語が、日本での意味とは違う、というところもありますが、共に目指す目標はよりよい社会福祉の実現です。海を越えて協働していくことで、相互の社会に、より一層の社会的企業の活躍が満ち溢れることでしょう。

Scott Baron  スコット・バロン
今回のコミュニティ・ビジネス・レポートの筆者。
大きな身体と魔法使いの帽子、そしてユーモアなセンス。
英国と日本の架け橋となる活動を推進しています。

レポートの販売について

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英国における社会福祉の用語に関する基礎知識

使用されている「専門用語」と語句の理解

これからのCBの紹介と解説で使用される言葉に関して、日・英間で言葉の意味の解釈に相違があることが分かったので、いくかの「単語」と「語句」を詳査すれば理解に役立つだろうと思う。

理解する上で差異が出るのは、単語の理解か誤解に起因することが多い。単語あるいは短い語句は、概念、観念、考え方を伝達するために使用されることが多いが、英国と日本では見方が異なることがよくある。
このような特質を認識しないと誤解が生じ、いかなるものであれ、政策を立案し関係を構築する際に、深刻な「問題」に発展することもある。各々がどのように考え、使用する言語をどのように解釈するかを理解しかつ正しく評価できないならば、取引や個人的な関係に重大な障害が発生し、深刻な影響が出ることもある。

言語と文化の違い

こうした「相違点」を単に「言葉」と「文化」の問題として片付けるのは簡単だが、「単語」は英国外では必ずしも理解されない概念、観念そして微妙なニュアンス(言葉のあや)についての考え方を伝え、且つ表すことが多いので、十分注意する必要がある。

例えば、コミュニティー・ビジネスをとっても、その本質的な方針が、社会的問題の解決か、営利の追求か、で全く意味合いが変わってしまう。場合によっては、大きな誤解を招きかねないので、くれぐれも本質的な部分を熟知して使う事をお勧めする。

誤解されやすい用語

健康、社会福祉サービス、社会的企業及びコミュニティ・ビジネス分野で、英国でよく使用されているが、日本では不安や混乱をひき起こし、深刻な誤解を招く可能性が高い「単語」の例を2つ挙げる。
その例とは、「ボランティア(Volunteer)」と「ボランティア組織(Volunteer Group)」、「起業家(Entrepreneur)」と言う単語である。これらの単語は英国で何十年も使用されてきて、特殊な「概念」を表すようになった。
一見したところ興味深いこれらの「単語」は、日本でも次第に使用されるようになっている。しかし、これらの単語を翻訳し, 実際の活動に移すのは難しく、問題になることが時々ある。

英国におけるボランティア

英国においては「ボランティア(Volunteer)」という単語は、自分の時間と(または)財政的支援を、別の個人、グループ、地域、または組織に、“無償で”提供する用意のある個人を、通常意味するようになった。小額の費用が請求できる場合もある。しかし、当事者がこの権利を放棄することが多く、この時間と費用は(事実上)「一種の寄付」として提供される。「非営利」地域グループへの「現金」や「現金同等のもの」での寄付や「慈善事業」は、「ボランティア」団体活動に大いに貢献している。

英国におけるボランティア組織

従って、英国ではボランティアに対して、人々が寛大な心構えで関わりを持ってきたので、長い年月の間には非常に多数のボランティア団体が誕生した。ほんの数人の小さな組織もあれば中規模から大規模な組織まで多様である。英国にはこのような組織が約50万あり、数千万という人達が何らかの形で関わっている。大きなボランティア組織は年間収入が何百万ポンドにもなるが、その反対に事実上全く収入がない組織もある。文字通りの意味では、資格や構造に関係なく、全ての「非営利(Not-for-Profit)」ボランティア団体や組織を、「社会的企業(Social Enterprise)」とみなすことができる。

社会起業家とは?

「起業家(Entrepreneur)」という単語は、かつて投機的事業や活動をさすのに使用されていた。しかし現在では、地域内で必要とされる社会福祉や健康プロジェクトを運営し促進する人達をさすのに使われるようになり、「社会起業家(Social Entrepreneur)」という言葉も出現している。
これらのひたむきな人たちは、仕事或いは使命に、非常に献身的であることが多い。そして、ずばぬけて創造的な率先力と感動的な活動、結果を出そうとする責任を負っているが、これは委員会や組織或いはグループでは難しいことである。
このような仕事は通常、極めて集中的に、且つ、より迅速に成果を挙げることに価値がある。さらに、現在提供されている地域サービスに欠けている、本当に必要とされているサービスを提供し、その隙間を埋めることである。

よく使われる単語と意味

組織やグループ・人

“Not for Profit” Organization 非営利組織
 英国では厳密には“Not for Profit Seeking”営利を追求しない社会的事業を指す。事業の継続のために収益を上げても、それを事業目的の達成のため以外には使わないという意味である。
“Voluntary Organization” ボランティア団体
 自主性を持った個人が集まって、ボランティア活動を行なっている数人〜大組織の団体で、法人格の有無は問わない。なお、チャリティー法に基づいて登録をしている団体は、チャリティー団体という。
Registerd“Charity Organization” 登録チャリティー団体
 社会的・公益的な事業に従事することを誓約し、チャリティー法に基づいて認定を受けた団体で、寄付への税金控除が受けられる。英国にはチャリティ団体は26万あるといわれています。
なお、“チャリティ” には“寄付”と“慈善”という意味がある。
“Social Entrepreneur” 社会起業家
 まだ手の及ばない社会のニーズを見つけ出し、直接に影響を受けている人々の声に真剣に耳を傾け、解決策を生み出す、非常に意欲的で社会意識の高い人達。行動範囲が広く、とても活動的で能動的。
“Social Enterprise” 社会的企業
 英国では社会的企業という言葉は、幅広い分野を指す包括的な言葉で、一般的には「社会目的のために営む事業」と定義される。NPO/NGO、社会起業家、CBも、全て社会的企業である。
大きなところでは何万人もの雇用をしている社会的企業もある。
“Community Business” コミュニティ・ビジネス
 ビジネス的手法を用いて地域の問題を解決する活動を指す。日本と英国では定義に若干の違いがあるが、地域活性化を地域の資源を活かして行なう手法である。
なお、“地域で商売をする ”というだけではなく、社会的問題を解決するために、営利事業を営むというのが大原則。
“Commercial Business” 営利事業
 一般的な営利を目的とした民間企業を指す。雇用を生み出すことや、環境対策に考慮している企業であったとしても、大前提として“何を目的をするか”で、社会的企業とは異なる。
“Community Group” 地域組織
 事業体の形態ではなく、地域で様々な社会的活動をしている人やグループ・組織などを指す。大組織の地域支部も、含まれる。
“Volunteer Group” ボランティア組織
 ボランティア団体と比べて、より地域的で組織のしばりの少ない、任意の集まりといったニュアンス。垣根がないつながりなので、ボランティア団体のつながりなども含む。
“Volunteer” ボランティア
 現在は、ボランティアとは、“自発的”に行為をする人を指し、その時に対価を求めていないことが多いので、無償という意味も含む。しかし実費はかかるので、ボランティアは無料、という意味では使われていない。
なお、英国ではボランティアの参加イベントやトレーニングが充実しており、若者の社会参加や高齢者の生き甲斐として、実践的な場を数多く提供されている。

 

社会的な用語

“Social Inclusion” 社会的受容
 高齢者や障害者を疎外するのでなく、日常の社会で共に生活できるように、取り組んでいこうという試み
“Older People” in UK and EU 英国とEUにおける高齢者
 政策的に正しい意味では、50歳以上の人をさす。
定年については、英国では女性は60歳男性は65歳だが、これを70歳まで引き上げるという運動が行なわれている。
“Person Centered Care” 介護される人の立場にたった介護
Voluntary Community Response to “Needs”「ニーズ」へのボランティアによる地域の対応
Local Government Response to “Needs” of “Older People” 「高齢者」の「ニーズ」に対する地方自治体の対応
“Patient & Public Involvement” 患者と住民の参加制度

 

地域や社会を指す用語

Local Community 地域社会
 地域の人が生活圏や活動圏で連携できる小範囲の地域単位。
“Local” 狭い意味での地域・地方(その時の意味にもよる)
似た意味の単語で“Regional”は、地方や州を指す。
“National”は、英国を指す。(イギリスは連合国家なので、複数の国の連合国家)
National/Regional Policy and Response to Local “Needs” 地域の「ニーズ」に対する国/地方の政策と対応
“Public Sector” 公的部門
“Private Sector” 民間部門
“Third Sector” 国や地方公共団体と民間の共同出資による部門
“Voluntary Sector” ボランティア部門
 社会での活動範囲を、上記のように各セクター(部門)で区分している。英国ではボランティア部門が社会の中心になるように働きかけた結果、社会的事業は15,000社、チャリティー団体は26万団体ボランティア団体は50万団体以上にも上る。

英国のコミュニティー・ビジネス(CB)を含むソーシャル・エンタプライズについての簡単な説明

英国のコミュニティ・ビジネス(CB)

コミュニティ・ビジネス(CB)について、英国における状況を説明します。
CBは、1980年代に貧窮した地域の復興と地域産業の開発のために生まれた社会的事業です。
貧困や過疎、荒廃など地域的問題の多くは、その 地域に人とお金が効率よく流れるようにすることで、自然と解消することができるのです。 CBは、問題を抱えている限られた地域に、ビジネス的手法をもって、地域資源を利用することで地域の雇用と収益を生み、地域活性化につなげようとする流れです。
ゆえにコミュニティ・ビジネスは、まず営利を目的とし、 限られた範囲の問題を、早急に解決する特効薬として、非常に効果があります。

CBとソーシャル・エンタプライズ

そして現在、英国ではコミュニティ・ビジネスという単語は、あまり使われていません。
それに変わって活動するのが、 ソーシャル・エンタプライズ(社会的企業)と、ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)です。
CBは限られた範囲の問題解決に向きますが、ネットワークが弱く、また営利が目的のため、他の団体との結びつきも困難です。
また、寄付や補助金の判断に拠るところがありません。自力で立つことは、ビジネスの条件です。
チャリティー団体を含めた社会的企業の場合、まず税金面での優遇措置があること、寄付金は税金控除される等のメリットがあります。
また、同じ目的の団体や同じ地域の団体、協働してプロジェクトを組む、などの協力し合える仲間同士のネットワークが、政府、民間企業、チャリティ団体、ボランティアの間で網目のように網羅されています。相互の協力と部門(セクター)を超えた協力は、社会的メリットがとても大きいのです。

ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)は、地域の問題を解決するために、問題を発掘し、解決する手段を講じる専門的な人達です。彼らが、その地域問題の解決策として、CBを推進するという例はいくつもあります。閉鎖された地域では、根本的に問題そのものが発掘されていないことが多いため、活動的な社会起業家の介入が不可欠なのです。社会起業家は、CAN(後述)などのネットワークと繋がりがあるため、いくつもの成功した実例から、その地域に効果的な解決策を進めていきます。日本でも日本版CANが立ち上があり、大きな話題となっています。
なお、ボランティア組織は、このCBとは明確に区分けされます。

誤解されやすい用語

日本では、 CBとは、NPOや社会活動に熱心な会社法人が社会的目的でビジネスをするというような意味なので、英国の活動とはニュアンスが違いますが、まずは社会的な問題の発掘が不可欠であり、その解決策の蓄積が重要だということです。

余談になりますが、NPOという単語はアメリカ由来の単語なので、英国由来のCBやチャリティとは相容れないニュアンスがあります。
英国人に、NPOがコミュニティ・ビジネスをすると説明すると、えっ、という反応を示すので、基礎的な理解が不可欠となります。
日本版NPO、日本版コミュニティービジネスをいかにして、世界の国々とリンクして、活動を取り込み広げていくか。
今後のエイジコンサーン・ジャパンの活動目標のひとつでもあります。

コミュニティ・ビジネスに関係の深い団体

CAN コミュニティー・アクション・ネットワーク

目標  CANは、起業家的手法による新しい解決方法を推進して、社会問題をより効果的かつ効率的に取り組もうとしている。この目標達成のために、CANはボランティアや非営利組織を官・民部門と結びつけ、地域社会の人々の連携を図っている。これにより、発想や実体験を共有でき、革新を促進していくことができる。
使命 CANの使命は、社会起業家を通じて、恵まれない地域社会の人々の生活を、その改善が目に見え、数字で測るこのできる具体的成果を出して、大きな社会変革を起こしていくことにある。CANの構想は、パートナーや主要機関と協力して、英国社会に、活力ある、刺激的で力強い、効率的かつ持続可能な社会経済を生み出すことである。そうすることにより、都市・地方を問わず全ての人々と、とくに恵まれない地域社会に住む人々のために、繁栄と、生活の質と福祉の向上を図るというものである。
戦略

CANの戦略は、社会起業家を支援して、地域社会と社会経済に大きな影響力を図ることに焦点を当てている。そのために、次のことを実施している。

  • すでに確立した社会起業家や社会的企業を支援するため、高付加価値の援助を行う。
  • 社会的企業を育成し、飛躍的に業績をあげさせる。
  • 組織的拡大・ライセンス契約・フランチャイズ契約、または他組織との協働/パートナーシップ関係を通じて、社会起業家の製品やサービスのレプリカを作る。
  • 準備段階や立ち上げ段階にある社会起業家への継続した支援を行い、業績と業務効率の改善、収益事業の伸展、官・民部門との協働を推進する。
  • 仲間同志の学習会や、経験や良い実例の分かち合いを奨励する専門団体やクラブを始め、なるべく幅広い多くの社会起業家や社会的企業のネットワークを展開する。
  • サービスを単独又は他の組織と協力して提供する。
  • 社会再生のために「社会起業家」というアプローチが重要であるということを、政府、公・民部門の間に浸透させる。
事業例

社会的フランチャイジング

英国では、社会的フランチャイジングという言葉が次第に多く使われるようになっている。これは社会的企業が、自身の成功事業モデルのレプリカを作り、他の個人や組織が同じものを他の場所で立ち上げ、運営できるようにするプロセスを指す言葉である。

 世界でも、有名な目抜き通りにあるブランド企業の成長に関連する、営利部門でのフランチャイジングの概念に基づいている。 フランチャイジングとは、各人がすでに成功した事業モデルを買い取り、本部の厳しい指導を受けながら、自分自身の事業として運営していけるため、急成長が可能である。成功したフランチャイズ事業の特色は、強いブランド力、充実した事業体制、それとネットワークによる支援体制である。

 社会的フランチャイジングはもっと広義に使われる。社会的事業を広範囲にレプリカ(擬似複製)して立ち上げ、社会フランチャイズ契約・ライセンス契約・協力関係などを利用して、成功したモデルを中心としたネットワークを構築することを指す。

 この事業は、立ち上げ時の「車を再発明する」症候群や危険の多くを回避する助けとなる。社会的フランチャイジングは、未だ発展の初期段階にあるが、英国内でもトップの社会的企業の幾つかと協働する“Beanstalk Programme”をCANは開拓し、先導している。(なお、Beanstalk Programme”については、資料に詳しく書いています。)

 

 

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